白百合監護院

映画の完成度は，物語のスケールに
左右されない。

主演俳優のジャン・デュジャルダンと
セシル・ドゥ・フランスのセクシーな
演技に見惚れていた私は,『メビウス』
という映画の物語が途中で，どうでも
よくなってしまったが，それでも充分
満足することができた。

ロシア連邦保安庁の情報局員を演じる
デュジャルダンが恋心を抱く女性は，
欧州の犯罪組織と関係する仕手戦の
大物を演じるフランスだ。

セシル・ドゥ・フランスというとラフで
ボーイッシュな印象のある女優なのだが,
この映画では孤独な色香を漂わせる二重
スパイの女を演じている。最初，画面に
登場した彼女を見たときに，ものスゴい
めがね美人ぶりなので，あのフランスだ
と気づかなかった。

最近，外国の映画は40代，50代の俳優が
主演を務める作品が多い。

デュジャルダンは43歳，フランスは39歳だ。
この映画で，2人がクラブのソファに座って,
お互いに心を許さない逢瀬へ誘いあう場面が
ある。この場面は，年齢の遍歴を魅力にした
男と女でないと絵にならない。若さの衰えに
怯えてるような役者ではダメだ。

デュジャルダンの表情がクールに映えるのは，
ただ男の美貌に優れてるだけでなく，寡黙で
非情な人格を容姿で演じる力があるからだ。

私もまねしてみたいけど，フランスのような
色香の漂う美女にハスキーな声で誘惑されたら，
緊張でグラスを手から落っことすにちがいない。


とりあえずデュジャルダンを見本に，大人の ｢男」
を磨きます， はい。


ちなみに，素顔のデュジャルダンはアカデミー賞の
受賞式で，放送禁止用語を連発し，会場を騒がせた
最高にイカす男である。